真空管式AMラジオ用AFC 装置の製作(2019.2.9)

 完成したラジオで放送を受信していると、時間が経過するにつれてチューニングがずれてくるのが気になってきました。下記の表は時間の経過による 局発周波数の変化を周波数カウンタで測定したものです。時間の経過とともに周波数が低くなっています。真空管の発熱によるバリコンやトリマの膨張 が原因ではないかと推察されます。
電源投入後の時間経過と局発周波数の関係

 そこで、局発周波数のずれを自動的に修 正するAFC装置(AFC: Automatic Frequency Control)を考案してみました。制御にはマイコンを用い、局発周波数を測定して受信周波数を表示すると共に、局発周波数の制御も行わせようと考えました。技術的に は、マイコンを使用するくらいならば、PLLシンセサイザで正確な発振周波数を得るのが正解だと思いますが、本体ラジオの回路の大幅 な変更が必要になります。バリコンによる選局方法は変更せずに、外付け装置を使用する解決策を試してみました。

 発振周波数の制御は、電圧で静電容量を変化させることができるバリキャップを使用します。下図のように6BE6による局部発振回路 にバリキャップを挿入してみましたが、発振電圧の振幅が大きいせいか、制御電圧でバリキャップの容量を変化させることができませんで した。
失敗した回路

 上記の問題の解決策とし て、発振振幅を抑えるためにFETとトランジスタによる電源電圧+5Vの発振回路を作成し、6BE6は混合のみを担当する回路を試したとこ ろ、バリキャップで発振周波数変化させることができるようになりました。混合回路は往年のアマチュア無線用受信機9R59DSの回路を参考に しています。改造後のラジオ回路図はこちら


 一方、マイコンを用いた周波数測定および制御回路 は、未経験の分野でした。初心者にもわかりやすそうなArduinoを使用することにし、Arduino Unoのマルツ製互換ボードMaruduino UNO R3を購入しました。福田和宏氏による『電子部品ごとの制御を学べる Arduino電子工作 実践講座』(ソーテック社、2018年9月発行)という本を参考にし、なん とか作ることができました。
 周波数の表示には4桁の7セグメントLEDを使用し、HT16K33というLEDマトリクスドライバーモジュールを使用しました。また、周 波数カウンタの入力部には、バッファとして74HC14を使用しています。マトリクスドライバやバッファ等の周辺回路は、Arduino用専 用のユニバーサル基板を利用して作成し、本体の上に載せる形で使用しています。電源回路は、手持ちのトランスを使用しました。定格ぎりぎりで 使用していますが、トランスの温度はあまり上昇していません。

回路図はこちら 

 一方、プログラムについては、40年近く前に大学の授業でFORTRANのプログラムを作成して以来のプログラミングですので、試行錯誤 に時間がかかりましたが、何とか動作しています。事前に<Wire.h>および<FreqCount.h>というプ ログラムを読み込む必要があります。<Wire.h>は、Arduinoライブラリに最初から含まれています が、<FreqCount.h>は、ライブラリマネージャを利用してダウンロードする必要があります。
 ラジオの局発信号を10ミリ秒間パルスを計測し、制御に用います。制御用のパルス数(1の位が100Hz)を10で除算してkHz単位にし た後、455を引き算したものを受信周波数(kHz)として7セグメントLEDに表示させています。
 AFCスイッチをONにした時点の周波数を維持すべく、周波数が上がれば制御用電圧を下げ、周波数が下がれば制御用電圧を上げるようにして います。制御用電圧はPWMにより255段階で変化させることができます。PWM出力を平滑回路を通してラジオ本体のバリキャップに接続して います。当該ラジオでは時間経過とともに周波数が下がる傾向が見られたため、制御電圧をあげてバリキャップの静電容量を減少させる側に余裕を とるために、制御電圧の初期値は0.98V(50/255*5=0.98)としています。また、AFCスイッチがONになっていることに対応 してLEDも点灯させています。


制御用のプログラム(スケッチ)はこちら

ケースの製作

 ケースは既製品を使用せず、アルミ板を切り出して製作しました。7セグメントLEDを採用したためか、70年代のデジタル表示機器のよう な懐かしい感じのデザインになりました。背面に開口部があるのは、Arduino基板のUSB接続口を使用するためです。正面の化粧パネルと 底板は2mm、化粧パネルの裏側の板と背面パネルは1mmのアルミ板を使用し、カバーは0.5mmのアルミ板を曲げ加工して使用しています。 各パーツの接合は10*10mmのアルミアングルを使用しています。電源スイッチと連動するACアウトレットを背面に取り付け、本体ラジオの ON/OFF操作もできるようになっています。

正面
AFC ONの状態でランプ点灯
 
背面
ラジオ本体とはステレオミニジャックで接続します
使用してみて
 AFCの効果を確認するために、電源投入直後の周波数変動をAFC OFFの場合と、AFC ONの場合で比較してみました。結果は以下のとおりです。

 また、AFC ONで10分間使用した後ににAFCをOFFにすると、1159kHzに受信周波数が変化することも確認されました。したがって、AFCは期待通りの働きをしてくれている ことが確認できました。

ラジオ本体の製作記事に戻る
トップページに戻る