デスクトップパソコンに接続して机の上で音楽を楽しむためのアンプです。机周りは空いている場所が少ないの
で、なるべく小型にすることを目指しました。2017年に製作しましたが、2023年に回路を修正してみました。
外観
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使用中の本機
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背面
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なるべく小型にするために、シングルアンプとすることにしました。出力はそんなに必要ないので、以前安
く大量購入していたユーゴ製の6CW5を使用してみることにしました。6CW5は5極管ですので、5極管、UL接続、三極管接続で試作を
行いました。デスクトップに小型のスピーカを置いて使用することから、なるべくダンピングファクタを大きくとりたいと考え、三極管接続が
もっとも好ましいという結論に達しました。6CW5のプレート損失と第2グリッド損失の合計は、10.5Wとし、最大定格の76%に抑え
てあります。また、回路は2段増幅構成とし、十分な負帰還をかけるために前段には五極管6AU6を使用しています。真空管屋さんで東芝の
通測用を見つけたので購入しました。負帰還を多めにかけるので、十分なスタガ比を確保する目的で出力段のグリッド抵抗に200pFのコン
デンサを並列に接続して初段のカットオフ周波数を低く設定しました。出力トランスには、ノグチトランスのPMF-5WSを使用していま
す。変則的な使い方ですが、二次側の16Ω端子に8Ω負荷を接続し、一次側を2.5kΩとして使用しています。
電源トランスは春日無線変圧器のKmB250F2を使用しています170Vのタップがあるのは貴重です。シングルアンプなのでハムの
低減には万全を期し、1Hのチョークコイルを2段構成で使用しています。初段のヒータは直流点火としています。
元の回路で、初段の6AU6の第2グリッド電圧がプレート電圧より高いのが気になりました。そこで、テ スト回路を製作し、第2グリッド電圧やプレート負荷抵抗を変化させてみました。なお、RpとRg2は固定抵抗とし、Rkは可変抵抗にし て、ゲインが高くとれる値を探りました。
Rk(Ω) | Rg2(Ω) | Rp | gain(倍) | Ek(V) | Eg2(V) | Ig2(mA) | Ep(V) | Ip(mA) | |
Rp51kΩ | 1.2k | 5.1k | 51k | 86 | 4.27 | 191 | 1.77 | 71 | 2.53 |
600 | 100k | 51k | 105 | 1.95 | 108.7 | 0.91 | 83.9 | 2.28 | |
230 | 200k | 51k | 116 | 0.63 | 51.4 | 0.74 | 105 | 1.86 | |
Rp100kΩ | 614 | 200k | 100k | 160 | 1.34 | 74.3 | 0.63 | 47.5 | 1.53 |
399 | 390k | 100k | 164 | 0.6 | 39.1 | 0.41 | 92.5 | 1.08 | |
389 | 470k | 100k | 150 | 0.51 | 33.3 | 0.36 | 106.8 | 0.93 |
Rpを100kΩとして、Rg2を
390kΩにすると元の回路より倍くらい高いゲインが得られそうなので、回路を修正してみました。ゲインが高くなったことから負帰還の量
を増やしてみました。併せて6CW5のグリッド抵抗に並列に接続してある補正コンデンサの値を調整し、高域のピークをなくしています。ま
た6CW5のプレート電圧を少し下げています。これは、製
作した当時の家から引っ越して新しい家でAC100Vの電圧を測定してみたら、102V程度あり、元の家の電圧より高くなっていたためです。
修正後の回路図はこちら
このところ小型アンプに採用している2階建て構成のケースにしました。下の段には電源
部、上の段に増幅部を収めます。以前の作例では奥行きを300mmとしていましたが、今回は奥行きを200mmとしました。上下分離でき
るようにし、配線の接続はELコネクタを利用しています。底面の大きさは100mm×200mmとすることができ、コンパクトに収めるこ
とができました。前面にアルミパンチングメタルを用いて通気口とするのは、過去に製作した6EM7を使用したアンプ等と共通の仕様です。入力切替スイッチも必要ないので、
シンプル なデザインとすることができました。電源スイッチはオルタネイト型のプッシュスイッチとしました。
ユーゴ製6CW5と東芝通測用6AU6
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外観
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負帰還を11dBかけ、電圧利得は6倍(15.56dB 8Ω負荷)となりました。パソコンからの出力を受け、小音量で音楽を再生するには適切な利得となりました。ダンピングファクタは、20Hzで7.38、1kHzで8.89 となりました。チャンネル間クロストークは、1kHzでは-69dBでしたが、20Hzでは-41dBに悪化しています。出力段がシング ルであり、左右チャンネルの電源の分離が不十分であったため低域のクロストークが悪化しています。
周波数特性は、下のグラフのとおりです。30kHzから50kHzにかけて少し高域にピークができてしまっていますが、最大0.3dBのピークなの でそのままにしてあり ます。
周波数特性
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出力対歪率特性
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ゲインを多くとることができたため、負帰還を約14dBかけることができました。そのためダンピング ファクタは、20Hzで10.7 、100Hzで12.5、1kHzで12.5に向上しました。周波数特性では、高域にあった小さなピークが消えています。代わりに10Hzで0.84dB上昇した特性にな りました。また、低域でのクロストークが向上しましたが、初段のゲイン向上の影響か高域では低下しています。(20Hz -54.4dB 、1kHz-62.5dB 、8kHz -44.6dB )最大出力も少し下がっていますが、最低歪率は低下しました。(1kHzで0.12%)
周波数特性(修正後回路)
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出力対歪率 特性(修正後回路) |
引っ越し後は、デスクトップ用から居間のテレビ用に用途が変更になりました。プリアンプと組み合わせて音楽番組の音を良い音で聞きたいときに使用し
てます。サイズが小さいのも助かります。ダンピングファクタが大きくなった効果はよくわかりませんが、ゲインが15.5dBから19.8dBに増えたた
め、使いやすくなりました。ノイズはほとんど聞こえません。出力管のプレート電圧を少し下げたので、より長寿命が期待できます。