S家リビング用オーディオシステム(パワーアンプ1号 EL34pp)    (2015.12.29)

正面

背面

パワーアンプはモノラルを2台制作

 システムの配置を考えた際に、小さめのモノラルアンプ2台の ほうが、融通が利くのと、制作も楽にできることからパワーアンプはモノラル構成とし、2台制作することにしました。まずは1台試行錯誤をしな がら作ってみて、もう1台は完成したものをコピーして制作することにしました。

パワーアンプ回路

 プ リアンプと同様に、自分の手元を離れても安心なように、実績のある回路とし、今後も入手が容易であると思われる真空管を選択しました。 従って真空管は12AU7とEL34を使用しています。真空管のプレート損失は定格よりも控えめにして長寿命を目指しました。
 回路は、ムラード型としています。出力段は自己バイアスを基本とし、バランス調整の調整のためにグリッドバイアスを0Vから-5Vの間 で調整できるようにしました。初段の12AU7は並列接続として出力インピーダンスを下げ、高域のカットオフ周波数を高くとるように意図 しました。TINAによりシミュレーションした結果では、カットオフ周波数は2.36MHzでした。2段目(位相反転段)のカットオフ周 波数は、236kHzとなりました。出力トランスは橋本電気のHW-25-8を使用しています。付属の周波数特性図によれば、このトラン スの高域カットオフ周波数は100kHz程度のようです。2段目と出力段のカットオフ周波数が2倍程度しか離れていませんが、可能な範囲 で負帰還をかけてみます。


   増幅部回路図     電源部回路図
 

負帰還ループのゲインと位相の測定

 TINAによるシミュレーションだけでは心配なので、このような回路を作り、負帰還ループのゲインを測定してみたところ、負帰還ループのゲイン が0となるのは、135kHzであることがわかりました。オシロスコープを使用して入力信号と測定端子の位相を比較してみると 135kHzでは、位相の遅れは80度程度であることがわかりました。この測定により負帰還量を8.8dBとしたときに位相余裕は約 100度、ゲイン余裕は22dBあることがわかりました。これならば安心です。

135kHzでの位相の遅れ



負帰還ループの周波数特性

シャーシの制作

 今回は、シャーシを塗装してみました。アルミに直接塗装することのできるスプレー塗料を使用していま す。写真ではわかりにくいですが、シルバー色を塗ってあります。アルミ板の下地をやすりがけすのため、工作中の小さなキズを隠すことがで きます。B電源用の電解コンデンサとバイアス調整用のC電源回路は、小型のアルミケースに組み込んでシャーシの上に設置してあります。こ のケースも同じ色で塗装しました。シャーシ内部にチョークコイルを収めようとしたらシャーシの高さが数ミリだけ足らなかったので、裏板に 四角く穴をあけて収めています。ラグ板や真空管ソケットはサブシャーシに取り付け、外から見えるネジをなるべく少なくしました。サブ シャーシは5mmのスペーサで本体に取り付け、外から見えるビスには見た目がきれいな「トラスねじ」を使用しています。
 入出力端子や電源コードは設置スペースの関係上、シャーシ上部に配置しました。こうすることで、シャー シ背面を壁面ぴったりに配置できます。

塗装が終了したシャーシ

頭が滑らかなトラスねじ

測定結果

周波数特性

 出力トランスの高域特性にピークがないため、きれいな減衰となっています。帰還抵抗に 0.0015μFの位相補正コンデンサを並列接続しています。容量性負荷がぶらさがっても発振には至らないようです。家庭用なのでスピー カーコードは短いですが、念のためチェックしました。




20kHz矩形波 縦軸1V/DIV
8Ω負荷

20kHz矩形波 縦軸1V/DIV
出力に0.47μFのみを接続

出力対歪率特性

 出力対歪率特性は、8.8dBの負帰還のおかげで最低歪率が0.1%を下回ることができました。最 大出力は10W程度となりました。
また、ダンピングファクタは20Hzで7.14、1kHzで8.62となりました。残留ノイズは入力ショー トで0.08mVとなりました。


 出力対歪率特性


2台並べてみました

ヒータの灯ったEL34

納品

 先日、無事納品しました。なんとか年内にシステムを完成させることができました。パワーアンプはスピー カーの後ろに設置したので、あまり目立ちません。耐久性を重視して設計したので、末永く使っていただけることを願います。


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