加齢とともに高音域が聞こえづらくなってきました。また、左右の耳で高音の聞こえ具合が違ってきています。そこで、左右独立のトーンコントロール 回路を持 つプリアンプを真空管回路で製作してみようと思いました。
R9(Z5) が入ると並列計算では解けなくなる
基本に立ち返って電気工学の入門書を読み、回路R9の両端の電圧を未知数とする連立方程式をたてて解を求めました。シミュレーションソフトを使用す ればすぐに 結果は出ますが、理解を深めるために自分で数式をたててExcelで計算してみました。詳細はこちら。不勉強のため、これまでエクセルには複素数の加減乗除の関数がある ことを知らなかったのですが、今回初めて使用てみて大変便利でした。計算の解説はこ ちら
シミュレーションの結果、回路の入力インピーダンスは、高域で低下する傾向にあり、R6を0にした場合に、80kHz以上の周波数で32kΩに
なることがわかりました。この値であれば、大丈夫と考えました。
フォノイコライザの回路は、ぺるけさんのページ
からのコピーです。2段目がSRPPになっており、上側の三極管が左右チャンネル共通になっています
が、プレートが交流的にアースされているので、クロストークに問題はないとの記載がありました。
ラインアンプ部は、前述の通り差動入力を用いたNF型トーンコントロールを持つ回路を採用しました。トーンコントロールにはボリウムではなく、各 チャンネル独立して1回路12接点のロータリースイッチを使用しました。中間点から上に5ポジション、下に5ポジション変化させます。12接点なので、中 間点から180度回った接点が余りますが、この接点は+5番目の接点に接続してあります。接点間の抵抗値はおおよそ3dBごとに変化するよう、エクセルで 計算して選びました。
また、電源は、手持ちのプリアンプ用パワートランス(TANGO ST-30S)を使用することを前提に設計しました。ヒータはプリアンプなので直流点火としました。フォノイコライザを使用しないときは、入力セレクタと連動したスイッチ 回路でフォノイコライザのヒータをOFFにしています。このため、ヒータ回路の電流が2通りになってしまう問題があり、ヒータ電圧を一定に保つために三端 子レギュレータを使用しています。12.6Vという中途半端な電圧に合わせるために、12V用の三端子レギュレータのGND端子とアースの間のダイオード を入れて電圧をかさ上げしています。増幅部回路図 |
電源部回路図 |
ケースはホームセンターで売っているアルミ平板を加工して自作しました。正面パネルだけは厚さが3mmあるので、指定寸法に切り出したも のを通販で購入し ました。増幅部は左 右 チャンネルを2階建て構造にしてあります。左右チャンネルの間に床板が入るので、チャンネルセパレーションの向上が期待できます。側面にはヒノキの板材をねじ 止めしまし た。ホームセンターで指定の寸法に加工してもらいました。紙やすりで表面を磨いた後、植物性のワックスを塗って仕上げてあります。
シャーシ内部図面 |
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外観 真空管上下に換気用の開口を設けました |
内部 増幅部は2層構造。上段はLch |
下から見たところ 下段Rchはシャーシ下から配線 |
背面 |
周波数特性の測定には苦労しませんでしたが、THD+Nの測定は、工夫が必要でした。本格的な計測装置を持っていないので、パソコンを用い、 USB接続の サウンドデバイスを使用し、フリーソフトのWaveSpectraとWaveGeneを用いて測定を行いました。こちらのサイトの情報を参考にさせていただきました。サウンドデバイスの入力インピーダンスが低いと思われ るた め、オペアンプを用いたバッファを使用して歪を測定しました。測定装置の関係で、歪率0.01%以下は測定が困難でした。なお、ラインアンプ部の残留雑音は左右チャンネル ともに0.2mVでした。
ラインアンプ部についてチャンネル間のクロストークも測定してみました。Lchの出力が10Vの時に、Rchの出力にどれだけ信号が漏れてくるのか
を測定しました。Rchの入力はショートしています。その結果、20Hzと1kHzでは測定限界以下、10kHzでは0.2mV(-94dB)、
100kHzでは5mV(-69dB)でした。中間のシャーシ板を挟んで左右のチャンネルを区画したので、良好な結果を得ることができました。
私の場合、右耳の高音域の感度が低下しているので、右チャンネルのTREBLEを少し持ち上げて聞いてみました。今まで聞こえにくかったシンバルの 音がより鮮明に聞こえるようになりました。原音忠実再生の考え方からすると邪道かもしれませんが、個人向けの特殊解としては、よいのではないかと思いまし た。