Excelを用いてCR型トーンコントロール回路をシミュレーションする 2022.8.1
先日作成したトー
ンコントロール回路付きプリアンプの設計をする過程で、回路定数を変化させた場合の 周波数特性や入力インピーダンスを計算する必要
があり、Excelを用いて計算してみました。抵抗やコンデンサの値を入れ替えると、即座にトーンコントロールの周波数特性グラフを描くことができ、大変
便利でしたのでご紹介します。作りこみは少々めんどくさいですが、一旦作成すれば、抵
抗やコンデンサの値を変化させてシミュレーションを行うことができま す。
回路
回路は、下図のCR型トーンコントロール回路です。この回路で、R2とR3はひとつのボリウム、R6とR7ひとつのボリウムを分割して表していま
す。したがって、R2+R3は一定にする必要があります。R6+R7も同様に一定にする必要があります。また、トーンコントロールの±0の時に周波数特性
を平坦にするためには、以下の式が成り立っている必要があります。(負荷抵抗R10は無視します)回路のわかりやすい説明は、ぺるけさんのページに掲載されています。ぺるけさんの回路ではR9はありませんが大きな考え方は同様です。
R1:R4=R2:R3=C2:C1
R5:R8=R6:R7=C4:C3
数式
エクセルに入力する数式に関する解説は、こ
ちらに記載してありますので、ご参照ください。計算の結果、出力に現れる電圧Vyは、以下の数式で表記できることがわかりま
す。あとは、 Excelを用いて式にあるY1,Y2,Y3,Y4,Y5やA,Bと
いったものの数値を計算し、この絶対値|Vy|をとれば出力電圧を求めることができます。
抵
抗・コンデンサの値を入力
シミュレーションで変化させることができる、抵抗やコンデ
ンサの値を表に記載します。あと の計算では、この表に記載されている数値を参照し て計算を行うように設定を行いま
す。下の図でR2を入力すると、R3は自動的に500-R2で算出されるよう設定してあります。R6とR7の関係も同様です。その他の数値は、自由に決め
ることができます。入力に便利なようにkΩやμFの単位で入力し、計算用には右の列にΩ単位とファラッド単位換算した数値が自動で入力されるようにしてお
きます。(抵抗は1,000倍、コンデンサの容量は1,000,000分の1)
コンデンサを含む回路なので、周波数によってインピーダンスは変化します。そのために、先に周波
数の列を作成します。計算では周波数はωに換算す る必要が
あるので、ωの列も作成します。式は=2*PI()*A23(A23は周波数fのセル)あとは、ωと上の欄にある数値を用いてZやYを
求めます。
上に示す表の例で入力した関数を下記に示します。&C$6のように$が入ってい
るセルの指定は、固定してそのセルを参照することを示し、左上の欄
の抵抗やコンデンサの値を参照します。複素数の四則演算を行う関数を使用しています。23行目の例を示しています。1行作成できれば、あとは、セルの右下の小
さな■を下向きにドラッグすることにより簡単にそれそれの周波数での値を得ることができます。
Z1=COMPLEX($C$4+$C$5/(1+(B23*$C$6*$C$5)^2),B23*$C$5^2*$C$6/(1+(B23*$C$6*$C$5)^2))
Y1=IMDIV(1,C23)
Z2=COMPLEX($C$8+$C$7/(1+(B23*$C$9*$C$7)^2),B23*$C$9*$C$7^2/(1+(B23*$C$9*$C$7)^2))
Y2=IMDIV(1,E23)
Z3=COMPLEX($C$12+$C$13,1/(B23*$C$14))
Y3=IMDIV(1,G23)
Z4=COMPLEX($C$15+$C$16,1/(B23*$C$17))
注:Z4の場合のみ、負荷抵抗R10がないものとしてインピーダ
ンスを計算し、1/Z4と1/R10を足し算してアドミタンスを算出しま す。(このほうが計算が楽です)
Y4=IMSUM(IMDIV(1,I23),(1/$C$19))
Z5=COMPLEX($C$18,0)
Y5=IMDIV(1,K23)
A=IMSUM(IMSUM(D23,F23),L23)
B=IMSUM(IMSUM(H23,J23),L23)
分子=IMSUM(IMPRODUCT(D23,L23),IMPRODUCT(M23,H23))
分母=IMSUB(IMPRODUCT(M23,N23),IMPOWER(L23,2))
上記2行の分子、分母は出力電圧Vyを求める式の分子と分母を意味します。一つの式でも
計算できますが、ミスを防ぐために分割しました。
Vy=IMDIV(O23,P23)
|Vy|=IMABS(Q23) ・・・これが出力電圧です。
周波数ごとの出力電圧がわかれば、グラフ化して周波数特性を視覚化することができます。
入力インピーダンスを求める
さらに、入力インピーダンスZinも算出することができます。算出するための式は以下の通りです。
Zin=1/I
I=I2+I4
I2を計算するためにはVxの値も必要です。
分子
2=IMSUM(IMPRODUCT(N23,D23),IMPRODUCT(H23,L23))
分母2=IMSUB(IMPRODUCT(M23,N23),IMPOWER(L23,2))
Vx=IMDIV(V23,W23)
|Vx|=IMABS(X23)
I2=IMPRODUCT(X23,F23)
I4=IMPRODUCT(Q23,J23)
I=IMSUM(Z23,AA23)
Zin=IMDIV(1,AB23)
|Zin|=IMABS(AC23)・・・これが入力インピーダンスで
す。
上の表に示したように、|Zin|も周波数との関係を表にし、グラフ化することができます。負荷抵抗(R10)を小さくとると、フラットにし
ても低域で出力が低下することや、R9の値が小さいと、TREBLEの最大・最小の時の出力レベルの変化が小さくなり、入力インピーダンスも低下することなど
がわかりました。
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